Pray(中編)



 朝起きたら、銀時はもう隣にいなかった。
 いつも昼近くまで寝ている銀時がいない。奇妙に思いながらは起き上がって台所へ向かって朝食を準備していた。
 妙な胸騒ぎがした。銀時が夢でうなされるのは珍しいことではない。だけど、昨夜のそれはいつもよりもさらに酷く、それで死んでしまったらどうしようなんて馬鹿なことを考えてしまったほどだった。
 散歩にでも行っているのだろうか。あまり気にしないようにしては味噌汁を作った。

「おはようございます」

 引き戸が開く音と共に、新八の声がする。

「あ、おはよう、新八くん。あの・・・、銀時見なかった?」
「いや、知りませんけれど・・・。まだ寝ているんじゃないですか?」
「いないのよ。いつもだったら寝坊しているのにね」

 ため息をつきながら、は無理やり笑う。

「・・・でも、すぐに帰ってくるわよね」

 そう言って、再びの準備をした。


 その後神楽も起きて、銀時を待とうという話になったが、三十分待っても帰ってこないので、お腹を空かせた二人は先に朝食を済ませてしまった。

「心配することないアル。銀ちゃんもジョギングしたい年頃ネ」
「にしても遅すぎだろォ? せめてさんに一言告げていけばいいのに・・・」

 だけど、の胸騒ぎは増していった。


 結局夕方まで待ったけれど、銀時は帰ってくることがなかった。

「もう、少しは万事屋の主人ってことを自覚してくれるといいんですけど」

 文句言いながらも新八はこの万事屋をしっかり守っている。その立場が少し羨ましくも思う。だけどには剣術もないし、神楽のように強くもない。
 そもそもが稼がなければ四人で路頭に迷うことになるのだが。

「あたし、そろそろ仕事に行かなくちゃ」
「ああ、もうそういう時間ですか。気をつけて行ってくださいね。銀さんに何か伝えることはありますか?」
「そうね・・・。新八くんや神楽ちゃんを心配かけないでって、伝えて?」

 はそう言って、下駄を履いた。

、夜には銀ちゃん、帰ってくるアルヨ。仕事終わったらまた来るヨロシ」
「うん、ありがとう、神楽ちゃん」

 神楽の頭を撫で、は万事屋を後にした。



 しかし、その予想は虚しくも裏切られることになる。
 そして、はどこかでそれを勘付いていた。

さん! 銀さんが帰って来ないんです! さんが最後に銀さんを見たのはいつですか?」
「・・・夜の三時ごろよ。・・・酷く、うなされていて」
 仕事が終わった真夜中、万事屋に帰るなり新八が出迎えた。
 ははっとなって一度外に出て、階段を降りた。いつも停めてあるはずの原付がない。

「もうすぐ二十四時間になりますよ。・・・警察に行ったほうが、いいんじゃないですか」

 を追いかけて新八はつぶやく。ここはかぶき町。背後はこの緊張感を無視した賑わいが繰り広げられている。そこから逃げるようには万事屋の中に入った。

「警察には言わなくていいと思うわ・・・。きっと銀時は自分の意思で、出て行ったのよ。そして、自分の意思で帰ってこないだけなんだわ」
「出て行くってどこへ!? もう帰らないつもりなんですか?」
「まさか」

 は微笑んだ。

「だってここは、銀時がやっと見つけた居場所よ? このままいなくなるわけ・・・・・・」
「・・・さん」


 言いながら涙が溢れた。
 は激しく後悔をする。
 もっと早く気付いていればよかったのだ。銀時の異変に。そうしたら銀時をこんな風に追い詰めることなんてなかったのに。






       
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