おまえなんか遊びだよ。
そう言われた夜を思い出した。 言われなくたって知っていたよそんなこと。でもわざわざ言葉にしなくたっていいじゃない。
季節は秋になり、あたしはもうアイツに会うのはやめた。 遊びだったのは事実でも、黙認しておけばよかったこと。一度言葉にしちゃうともう駄目なんだよ。何かが音をたてて崩れ落ちるかのように、もうあたしもアイツも笑えなくなったから。 だって、あたしはアイツのこと好きだった。 嘘くさい科白も、きっと女ならみんなに見せているであろう笑顔も、全部大好きで。 ・・・大好きで。
ネオンが眩しくて目を細める。あたしは自分で貯めた金で買ったヴィトンの鞄をぶらぶら揺らして歩いた。 こんな感傷的な夜にこそ、アイツを思い出す。 もう会う手段は絶たれている。携帯に残されたアイツのデータは全部消した。 それでもあたしの頭ん中、まだアイツで溢れている。どうしよう、だって遊びだったのに。
あたしはこんな形で捨てられてしまったけれど、不幸だったなんて思っていない。アイツに出逢ってあたしは幸せだったよ。 恨みは消えないし、愛情も消えないけれど。あたしはもう子供じゃない。アイツの愛を自ら葬るほど馬鹿じゃない。だからあたしもオトナぶって別れてあげた、ただそれだけのこと。 どんな思い出であれ、あたしにとっては遊びじゃなかった。 だから・・・。 アイツを好きだったことに嘘はない。そして、あたしの人生はアイツごときでは終わらない。
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