君と眠る



 珍しく朝から仕事で家を空け、午後三時にやっと解放された。
 新八と神楽は仕事が終わった途端、喜んで遊びに出かけた。定春も一緒だ。割と肉体労働もさせられたのに元気だなーと銀時はあくびをかみ殺す。
 もらった給料の封筒とポケットに入れ、のために何かを買おうか考えたが、何がいいのか思い浮かばなくて、考えているうちに銀時は万事屋に着いてしまった。
 ただいまーと言おうとしたが、自分を家の中には誰もいないことを思い出し、無言のままドアを開けて、閉める。
 裸足でフローリングを歩くと、妙な感触がする。これに慣れたのはいつだっただろう。ただいまと声を出すことが習慣になったのは、いつだっただろう。おかえりなさいと言われることが自分の中で当たり前になってしまったのは、ある意味恐怖だ。

「・・・・・・・・・・・」

 リビングのソファを見て、銀時は柄にもなく口をあんぐり開けた。
 ソファの上には見慣れた姿が眠っていた。

「・・・?」

 が合鍵を作ったのはずいぶん前のことだ。だとしても、連絡もなくが万事屋に上がりこむのは珍しい。しかも、眠っているなんて。

ー」

 先ほどのまでは疲労でぼーっとしていた頭が急に活性化する。銀時はにやりと笑って、床に座って、の寝顔を覗き込んだ。

「銀サンが帰ってきましたよー、

 珍しくは眠り込んでいる。面白くなくなり、銀時はの頬をつついたりつねったりした。はそれをうざったがるように、眉を動かす。しかし目を覚ますことはない。

「・・・銀サン怒るよ?」

 そうつぶやいて、銀時はの瞼にキスをする。すると、はゆっくりと目を開けた。

「・・・ぎんとき?」
「やっと目を覚ましたかよ。家主を無視して睡眠ですかコノヤロー」
「ちょっと・・・、あたし今、マジで眠いから。やめて。後にして」

 の上にのしかかろうとする銀時を、眠そうな冷めた目で見つめ、は再び目を閉じた。

ちゃーん。ココに来てその扱いはないんじゃねーの?」

 文句を連ねてみるが、返事はない。きっと昨日も遅くまで仕事だったのだろう。
 ゆっくり寝たいなら家で寝ればいいのにとも思うが、それでもこの万事屋に来てくれたことは嬉しいのだ。を襲うことは諦めて、銀時はの隣に寝転んだ。狭いソファの上。の身体は必然的に銀時の上に転がり、それを銀時は抱きしめる。

「・・・銀時? 何やってんの」
「一緒に眠るの。俺、今日は朝から肉体労働だぜコノヤロー」

 もう一度あくびをして、銀時も目を閉じた。はいぶかしげに銀時を見つめたあと、肩をすくめて目を閉じた。その身を銀時に預ける。銀時の肌は服越しでも熱くて、自分を抱きしめる銀時の腕は重くて、それでも自分の体重で銀時の身体を潰しそうで、快適だとは言えないけれど、それでも何故か安心する。
 これを求めてやって来たのだとは納得する。
 午後のまどろみ、万事屋には二人の寝息が漂っていた。




 二時間後、狭いソファで抱き合って熟睡する二人の姿を見て、帰宅した新八が絶叫し、神楽が歓声をあげたのは言うまでもない。






 
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